「かしこまりました」

 お辞儀をして頷いたクウェンティンは、何人かのメイドを連れて戻って来て、私は慌ただしく夜会へ行く準備をすることになった。


◇◆◇


 城の大広間は、光に満ちていて、眩しく美しい。色とりどりのドレスが会場を舞い、あちこちで楽しそうな会話の切れはしが聞こえていた。

 馬車で共にやって来たアーロンは、戦勝を祝う夜会の主役となるので、壇上で王より紹介され集まった貴族たちに挨拶もしたりするらしい。

 私はここで待つようにとアーロンに言われた場所で、一人シャンパングラスを片手に彼が戻るのを待っていた。

「……お義姉様?」

「ああ……ハンナ。今夜も、可愛らしいわね」

 そこには義妹のハンナが居て、私を驚きの表情で見つめていた。

「……お義姉様……肌もすっかり良くなって、良かったですね」

 義母が化粧品を取り上げ、私の肌を故意に荒れさせたことを、この子だって知っているだろうに……けれど、今更何の嫌味を言われても、特に響くこともない。

 アーロンが生きて傍に居てくれるなら、ハンナも義母だって、彼の妻の私にはどうしたとしても手出し出来ないからだ。