だから、彼は私の好きな色が知りたかったのだ。

「こちら、揃いの靴と髪飾り、身につける宝石も、全てご準備してございます」

「……早いのね」

 通常であれば一ヶ月、凝ったものであれば数ヶ月もかかりそうな工程なのに、こうして実物を目の当たりにしても信じられない。

 それだけキーブルグ侯爵家の力が、強いのかもしれないけど……。

「ええ。旦那様は今回の勝利の立役者ですので、奥様もこういう機会に同行されることも多いかと……」

 私はおそるおそるクウェンティンが持っているドレスに触れた。

 上質な生地に美しく精密なレース。いくらかかったのか、価格はあまり考えない方が良いのかもしれない。

「アーロンは……今夜、キーブルグ侯爵邸へ、戻って来るの?」

 夜会に出るならば、男性だってそれなりの準備が必要だ。夫婦は夜会中、共に過ごすことになるから、そこでゆっくり話す時間も取れるだろう。

「そのように伺っております。奥様も今夜の夜会には、同行なさいますか?」

 アーロンと話すことも目的だけど、夜会の主役にパートナーが居ないなんて考えられない。

「準備するわ。お願い」