驚いた私も小さく手を振って、彼は嬉しそうに微笑むと馬車に乗って仕事に向かった。

 アーロンはきっと体調が悪いと言った私を気にしてくれていたから、部屋の窓を見ていたのだろう。

 だから、私が自分を見ていたことに、気がついてくれた。

 わからない……どうして、アーロンは私に対し、あんなにまで優しいのだろう。

 これまでは、向かい合うことを、逃げてばっかりだった。アーロンと、一度話さなくては。

 だって、私はほんの数日前に幸せになるって決めて、再婚相手を探そうと赤いドレスを着て夜会に出た。

 その気持ちを、思い出すのよ。

 帰って来てくれた夫アーロンとわかり合って幸せになれるとしたら、それが一番良いことだし、話が早いはずだわ。


◇◆◇


 体調が良くなったと執事クウェンティンへ伝えた私は、アーロンが夜会に出席予定であることを知った。

「もしかして……陛下がアーロンのために、祝勝会を開催されるということ?」

 もし、そうならば、スレイデル王国の国民として、とても栄誉あることだ。