私の手は誰がどう見ても鞭に叩かれた傷跡に見えるだろうし、キーブルグ侯爵家で、アーロンの妻である私に対しそんなことをする人は居ない。

「そうか……言いたくないのなら、良い。だが、言ってくれるなら、俺が全て対処する」

「……ありがとうございます。アーロン」

 問い詰められずに安心した私を見て、彼は苦笑して言った。

「悪い。もうひとつだけ、確認だけさせてくれ。それをしでかしたのは、先日追い出した、あの二人ではないよな?」

 アーロンは、大きな勘違いをしていたようだ。私は苦笑して首を横に振った。

「ええ。これは、ヒルデガードとサマンサがしたことではありません」

 浪費癖のある放蕩者ヒルデガードが、妻にしようとしていた私に手を挙げるなんてこれまでに一切なかったし、サマンサは自分が贅沢な生活さえ出来ていれば、何の文句もないようだった。

「そうか……それでは、お茶を飲もう」

 アーロンはそれ以来、私の怪我には触れず、陛下より勝利を祝し多くの褒賞を賜った話などを話してくれた。