旅の一行は、ちょうど四日目にクレメント家の領地に入った。宿泊と休憩をしっかりと取りながらも、とても早い到着だ。
馬車移動の四人以外は、完全に護衛に徹していたようだ。そんな彼らの表情も、領地に足を踏み入れると一気に和らいだ。
馬に乗ったリアムが馬車に近づいてくると、そろそろ屋敷に到着することを伝えてきた。
楽しそうな雰囲気が漂う車内では、皆が馬車を降りるための準備をし始めたようだ。

それからしばらくして、馬車が停車した。外の景色を見ていたリアム以外の三人は、屋敷の存在に気づかなかったようだ。

窓から外を見た三人は息を飲んだ。想像していた屋敷とは違っていたのだろう。四人は、馬車から降りると辺り一帯を見渡した。珍しく、リアムがとても興奮している。他の三人は、重厚な城壁に圧倒されて足が前に進まないようだ。その様子を見ていたリアムとレアが、四人に近づき声を掛けた。

「クレメント家へようこそ」

ハッとした表情でリアムとレアを見る四人は、その先に整列する使用人たちにもようやく気づいたようだ。長旅ということで、油断していたのだろう。四人は背筋を伸ばした。

リアムに連れられた三人が屋敷内に足を踏み入れると、執事と思われる人物が指示を出し、多くの使用人たちが動きだした。

侍女に案内され部屋に向かうことになった四人。すでに緊張も解けたのか、柔軟性がありそうなエマは屋敷内を興味津々な様子で観察しているようだ。その後ろから、緊張した面持ちでついていくルイーズとエリー、そしてリアム。

今回はブラン家とシャロン家に一部屋ずつ用意されているらしい。
部屋に通されホッとするリアムとルイーズ。

「緊張したわ」
「僕もです」

二人は目を合わせて頷きながら呟いた。
「色々とすごいですね」
「そうね」

晩餐に呼ばれるまでの間、そわそわした様子のルイーズと興奮状態が冷めやらないリアムは、部屋のバルコニーから見える景色を見ながら心を落ち着けたようだ。