出発の時刻になり、皆が馬車に乗り込み始めた。ルイーズとリアムは、玄関前で見送りをしてくれるトーマスとローラ、そしてモーリスの三人に話し掛けた。

「こんな早くから見送りをしてくれてありがとう。私とリアムが留守の間、どうかミシェルのことをお願いします」「ミシェルのこと、よろしくお願いします」

ルイーズに続き、リアムも皆にミシェルのことをお願いした。今回は自分の希望を優先したが、毎日一緒に過ごしているミシェルのことがやはり気がかりなのだろう。

「お嬢様、リアム坊ちゃま。どうぞ楽しんできてくださいね! ミシェルお嬢様のことは、私ローラにお任せください。この機会に、ミシェルお嬢様との仲を深めるつもりですから!」

「そうですよ、お二人とも楽しんできてください」

「ローラ、モーリスありがとう」「ありがとう」

二人に感謝の言葉を告げていると、トーマスが声を掛けてきた。

「ルイーズお嬢様、リアム坊ちゃま。あちらの窓を見てください。」

窓に向かい手を向けるトーマス。そこにはルーベルトとエミリーの姿が見えた。二人はルイーズとリアムに控えめに手を振っている。

「お父様……お母様」「父上、母上」

「昨夜は旦那様と奥様、そしてミシェルお嬢様はご一緒にお休みになりました。本当はお二人の見送りに出たかったようですが、ミシェルお嬢様がぐずってしまわれるからと、あちらでお見送りをなさるとおっしゃっていました」

「トーマスありがとう。お父様とお母様にも『お見送りありがとうございます。行ってきます』と伝えてください」

「かしこまりました。ルイーズお嬢様」
トーマスにお礼を伝えて、窓際に立つルーベルトとエイミーにも手を振ると、ルイーズとリアムはエマとエリーのいる馬車に乗り込んだ。

馬に乗るリオンとレアは、馬車の護衛をするようだ。前方を守るリオンと、後方を守るレアは手慣れた様子だ。その二人に守られながら、少し長めの馬車の旅が始まった。