修道院から屋敷に戻った夕刻、ルイーズは修道院で聞いた情報を、一心不乱に日記へ書き綴っていた。脳内を占めていた情報を、日記に書きだすことで思考の波にのまれそうな自分を落ち着かせたようだ。
日記を書いている最中に、自分の記憶が欠けていることを聞かされた時の衝撃が頭を過ぎった。しかし思い出そうとしても、いつの記憶がないのか分からない状態のルイーズは、悩むことをやめたようだ。悩み過ぎて自分を苦しめても、良いことはないと思ったのだろう。
その日記を何度か読み直すと、次はLノートに自分の気持ちを書いていく。
嬉しかったことの欄に、《乗馬をレアさんに教えてもらえること》そして、願いの欄には《
女学院に通えるくらいには上達して、モーリスの負担を軽くしたい。そして、いつかは馬に乗って颯爽と走ってみたい》と書き、最後に《いつかはエリーとの大事な思い出を取り戻したい》と記した。
その後ルイーズは、ローラに部屋へ来てもらい、ミシェルの侍女になってもらいたいことを伝えたようだ。その話を聞いたローラは、初めこそ納得しなかったが、懇々とルイーズに説得されて、一時間後には折れた。ローラとしては、侍女になるため頑張るルイーズの成長を、側で見届けたい気持ちが強かったようだ。困ったときには、直ぐに手を差し伸べられる距離にいたかったのだろう。ルイーズも、そんなローラの気持ちを感じて嬉しく思っていたため、決心ができなかったようだ。しかし、二人の世話で忙しいローラの現状を知ったからには、このままにはしておけないと思ったのだろう。ローラもお年頃だ、料理人見習いのジョージとのデートが買い出しのみと聞いたルイーズは、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
明日は、父のルーベルトに相談という名目で時間をもらっている。その時に相談しようと心に決めて、この日は考えるのをやめたようだ。