その頃の修道院長室では、四人がルイーズとエリーについて話していた。
 エマとエリーの関係性や、ルイーズの家名であるブラン家について、エリザベスが修道院長のイリスに情報を共有しているようだ。

 その間、自分の手をじっと見つめるレアに、エマがどうしたのかと尋ねた。

「今しがた、ルーちゃんに握られた手なんだが、痛みが和らいだような気がするんだ。傷が消えたわけではないんだが……」

「気のせいではないの?人の体温やぬくもりで、心が落ち着くとかよく言うじゃない」

「そうだろうか……心が安らいだような感覚にはなったが……」

 言葉を交わすレアとエマの会話を聞いたイリスとエリザベスは、お互いに目を見合わせた。

「先日お手紙でご連絡した内容ですが、私の予想した内容が正しければ、ブラン家には悪いものを取り除く力や癒す力があるということでしょうか?今までそのような事例を見聞きしたことがないので、あくまでも私の想像ですが……」

 エリザベスの発言を聞いて、しばらく考えていたイリスが口を開こうとしたその時、エリーとルイーズが部屋に入ってきた。

「遅くなりました……申し訳ございません。聞くつもりはなかったのですが、「ブラン家」と私の家名が聞こえたので、気になってしまい……ブラン家についてのお話でしたら、私も教えてほしいです」

 話しの内容を聞いたらしいルイーズ。その気持ちを聞いたイリスが、エリザベスに頷きながらルイーズに話しかけた。

「そうね、自分のことだもの。知りたいと思うのは当然だわ。どうかしら、こちらで分かっていることは話してあげた方が良いと思うのだけど」

 ルイーズに答えた後、エリザベスに問いかけるイリス。

「そうですね。あくまでも推測の域ですが、説明不足の時はご協力いただけますか」
「わかったわ。私のわかる範囲だけど、お話をさせてもらうわ。さあ二人とも、こちらに座ってちょうだい」

 二人がソファーに座るのを確認すると、エリザベスが語りだした。