「そう。それならリザに聞くけど、写本や絵本の色合いってどんな感じなの?」
「そうね、写本は煌びやかで色鮮やかな印象かしら。絵本はそれを〈子供向け〉にしたものかしらね」

 エリザベスの返答を聞いたエマは、何かが腑に落ちたようだ。

「捉えかたの違い……。気づかなかったわ。エリーにとっての森は、新緑や木漏れ日?かしら。そうね、それだったら納得できるわ」

「エマ、どういうことか教えてくれる?」

 一人で納得するエマに、エリザベスがその先に続く言葉を求めた。

「私が思う森の印象は、実際に見たことのある夜の暗い木々なの。だけど、エリーにとっての森は、新緑や木漏れ日のような明るい印象なのよ。エリーは、よく絵本を読んでいたけれど、私は挿絵のある本をあまり好まなかったから、気づかなかったわ」

「森の話は分かったわ。それで、何に納得していたの?」

「ルーちゃんの目の色よ。エリーと私の森の印象が全く違うのよ。二人の主観に違いがあったから、話しが嚙み合わなかったんだわ。幼い頃のルーちゃんの目の色は……、青緑?というのかしら。透き通った色でとても綺麗だったわ。でも、今は青より緑が強いのよね……、エッどういうこと?」

「こちらが聞きたいわよ……。ルーちゃんは貴族令嬢よね。毎日、野山を駆け回っていた訳でもないわよね。もし環境によって変化したのではないなら……、ご家族はどうなのかしら。エマらしくないわね、おかしいと思わなかったの?」

「劇的な変化があった訳ではないから……、そこまで真剣に考えなかったわ」

「確かに、劇的な変化はないのだけど、何かが引っかかるわね」
「…………」
「…………」

 エリザベスの発言を、肯定するかのように黙り込むエマとレア。

「少し調べてみましょう」

 三人は視線を合わせて頷いた。