「……。ルイーズは、このカルディニア王国で、50年程前に起きた問題を知っているわよね」

「はい」

「その当時、婚約を破棄された方や、家を勘当された方の多くが、あの修道院に駆け込んだの」

 エミリーから、その後の彼女たちの様子を少し聞いただけでも、悲しくなってきたルイーズ。もちろん、不遇な立場になり駆け込む人がいることは知っている。

 しかしルイーズには、彼女たちがどんな気持ちだったかなんて計り知れない。自分と同年代の少女たちが、抱えたであろう苦しみや辛さを思ったら、祈らずにはいられないのだろう。どうか安らかな日々を過ごせていますようにと。

 祈っていた上級生たちの中には、元々信仰心の篤い人もいるかもしれないが、少女たちの話を聞いて、知っている人達がいるのかもしれない。多分、高位貴族たちは知っているのだろう。ルイーズが知らなかったのは仕方がない。それだけ避けられていた話題なのだから。

「…………祈りを、捧げていた人たちの気持ちが良くわかります」

 部屋を退出するルイーズを見ながら、呟くエイミー。

「私の時と同じ様に、学年が上がるにつれて知ることが増えてくるのでしょうね。ルイーズにも、その時はどうか、受け止めてほしいわ。お互い想い合い、大切に育んできた婚約を壊された彼女のことを、近いうちに知ることになるかもしれない。どうか皆が心穏やかに過ごせますように」