部屋に入ると、エイミーはソファーに座って、ルイーズを待っていてくれたようだ。

「失礼します。お母様、ごめんなさい。今日は、どうしても早くお母様にお話しをしたかったので、二人は一緒ではないのです」
「そんな時もあるわ。二人には、夕食の時にも会えるのだから、気にしなくて良いのよ」
「はい」
「ルイーズ、ここに座って。お話があるのでしょう」

 ソファーへ座るように促され、エイミーの横に腰かけるルイーズ。

「お母様、昨日はありがとうございました。お父様に口添えしてくださったのでしょう?」

「そうね。お父様は、貴女に苦労してほしくないとおっしゃっていたわ。親として、その気持ちもわかるのよ。でも、貴女が『新しいことに挑戦したい』と言ったとき、私は嬉しかったの。
私は、学生の時に興味を持ったことがあっても、何もせずにその思いに蓋をしたわ。貴族令嬢として……、その思いが強かったのね。時代が許さなかったとしても、何かできたはず……。今なら、そう思うわ。だから、ルイーズとリアム、そしてミシェルの三人には、自分の気持ちを大切にしてほしいと思っているわ」

 母親の発言にあった、《貴族令嬢として》それを聞いたルイーズは、この数日間、自身も何度そのことを考え、悩んだことかを思い出す。だから、母親が自分の思いに蓋をしたことも良くわかるのだ。それでも、母は自分のことを応援してくれている。ルイーズは、母親に感謝の念を抱いたようだ。

「お母様ありがとう。私、頑張るわ」

 頷き返すエイミーに、ルイーズは今日の出来事を話し始めた。

「今日は、転科手続きのために事務室に行ったのです。その時、淑女科のソフィア先生と院長先生が、その場で面接をしてくれました。本当は、他の先生も交えて面接を行うそうですが、三人で面接をして、その場で転科を許可していただけました」

「そうなの、それは急展開ね。戸惑ったけど、ルイーズは嬉しかったのね」

「はい。その後、院長先生から『中々難しいことだけど、今の気持ちを持ち続けて。その気持ちを忘れなければ大丈夫』とお言葉を貰いました。院長先生と、対面でお話したことが初めてだったので、緊張しましたがとても嬉しかったです」

「そう……。院長先生が……」

 エイミーは昔を懐かしむように、話し始めた。