ルイーズは、部屋へ戻る途中で見覚えのある馬を引き連れたモーリスを見かけた。驚きながらも、もしかしてと期待するルイーズは急いで応接室を目指した。応接室の前に着くと、身なりを整えドアをノックしようとしたが、中から聞こえてくる会話に手を出すのを躊躇った。

「どうしても、会わせてはもらえませんか? 少しだけで良いんです、お願いします」
「今はだめだ。君の御父上からも手紙が届いた。あんなことくらいって思っているかもしれないが、彼奴が…すまない、君の御父上が怒っているのは内容じゃない。それは分かるか?」
「はい」
「それに、今ルイーズは侍女になるために必死に頑張っている。気持ちを乱さないでやってほしいんだ」
「…………」
「今、君は次期当主として、彼奴に認めてもらえるように精進しないとな」
「……分かりました。認めてもらえるまでは、会いません。でも、お二人に認めてもらえたらそのときは、求婚することを認めてください」
「認め……たらな」

 渋々だが、返事をするルーベルトと、どうにか言質を取ることができてほっとするリアム。そんな二人のやり取りを聞いていたルイーズは踵を返し、自身の部屋に向かった。

「お嬢様……」

 ローラは、応接室に急いで向かうルイーズを気にかけ後を追ってきたようだ。

 * * *

「会わせてあげても良かったんじゃないかしら」
「中途半端な態度を取っているようじゃだめだ。そういうところは、彼奴を見習ってほしい。それに、少し会えないぐらいでだめになるなら、他の相手でも良いんじゃないか?辺境に行ったら、中々会えないじゃないか……」

「あなた……、本音はそれよね」

「これくらいのこと良いじゃないか。ルイーズと一緒にいられる時間は、あと少しかもしれないんだぞ」

「そうね」

 * * *

モーリスから馬の手綱を渡されたリアムに声を掛けるローラ。

「ルイーズお嬢様は、明後日の午後、修道院を訪問いたします……お話されることは叶わないかもしれませんが。突然のお声がけ、大変失礼いたしました」

お辞儀をして急いで去っていくローラに、ありがとうと呟くと、リアムはブラン家を後にした。