ルイーズは、深夜からずっとリリーに付き添っていた。

外の喧騒から、辺境伯が騎士団を引き連れて戻って来たことは予想がついたが、リリーから離れるつもりはないのだろう。

「……ルーちゃん?」

どうやらリリーが目を覚ましたようだ。

「リリーちゃん、気分はどうですか?」
「大丈夫……ルーちゃん、ずっといてくれたの?」

微笑みながら頷くルイーズ。

「ありがとう」

嬉しそうにはにかむリリーを見て、ルイーズは切なくなったのだろう。リリーの手をそっと撫でながら頷いている。
しばらくすると、エリーとリアムが部屋を訪ねてきた。ようやくルイーズは、仮眠をとることができたようだ。

リリーとリアムが楽しそうに話をしている傍らで、ルイーズがエリーにリオンの話をしているようだ。

「リオンさんから、卒業後にここへ来ないかって誘われたの」
「そう……、迷ってるの? 卒業まで、まだ考える時間はあるわ。私は、ルイーズが決めたことを応援する。でも、ここにいる間にリオンさんときちんと話した方が良いわ」
「うん……そうするわ」

つぶさに説明しなくても、エリーにルイーズの迷いが分かったようだ。


その後、夕食を四人で摂っているところへ、レアが辺境伯を連れてやってきた。銀色の髪に立派な体格のその人は、リリーを見るなり泣きながら抱きついた。

「リリー! すまない!! 辛い思いをさせて本当にすまない!」
「お父様、大丈夫です。少し苦しいです」
「父上! リリーが苦しそうだ。少し緩めてやってくれ」
「すまない」

辺境伯は、名残惜しそうにリリーから離れた。

「皆、食事中にすまないな。まだ、パーティーは終わってはいないんだが、父上が、どうしてもリリーに会いたいと騒いでな」
「今夜の主役が、パーティーを抜けても大丈夫なのですか?」

リアムがレアに問いかけたが……。

「大丈夫だろう。元々うちでは、あまりパーティーは開かないんだ。父上も数日前に知ったそうだ。今回のパーティーは、叔母上が勝手に仕込んだからな」
「そんなことってあるのですか?」
「……まあ、本来はそんなことないだろうが。父上は、周りから寛容だと言われてはいるが、大雑把なんだ。それに、興味が無いことには適当だ」
「……そうですか」