ここまで、リアムの質問に答えるレアの返答を聞いていたルイーズは、最後の言葉を聞いた瞬間、庭園を散歩する元婚約者と可愛らしい女性を思い出したようだ。

「その方たちは、無事なのでしょうか? 50年前のように、おかしな様子になってはいないのですか?」

「そこまで酷くはないらしい。第二王子の様子に気づいた第一王子とエリザベスが、上に報告をしたことで、陛下がすぐに動いたそうだ。今は……、その者たちは療養中だそうだ」

「そうですか……」

まさか、ここで元婚約者の存在を思い出すことになるとは思ってもいなかったルイーズ。自分や大切な人たちのことに手一杯で、元婚約者に気を配る余裕などなかった。婚約を白紙にしたのだからと、距離だけでなく幼馴染としての情さえも置いてきた。きっと、そんな自分を薄情者だとでも思っているのだろう。

「姉上は、何も悪くありません」
「そうよ、婚約は白紙になったのだから。相手のことを把握していないのは当然だわ」
「うん……。レアさん、話の途中ですみません。続きを聞かせてください」

頷き、話し始めたレア。

「それで、今王宮には秘密裏に隣国の第二王子が来ているそうだ。どうやら隣国の第一王子と侯爵家、そしてこの国の伯爵家が、今回の騒動の首謀者なのではないかと上の者たちは確信しているそうだ。これから騒がしくなりそうだな……。まあ、先ずは今日のパーティーが無事に終わることを祈るよ」

「そうですね」

ルイーズはレアに答えると、窓から見える明るい空を見つめていた。

部屋の窓から外を見れば、門を潜り馬車が入ってくる様子が窺える。日が落ちる頃に、パーティーが開始されるようだ。