クローゼットに置いてある荷物の中から、日記帳とLノートを取り出した。ルイーズは、その二冊を胸に抱えると、部屋の隅にある机に向かった。椅子を引き着席すると、日記帳を開いて、ここへ到着した日からの出来事を思い出しながら書き連ねる。次は、Lノートに自身の思いの丈を書き綴っていくようだ。机に向かい、何かをノートへ書き込んでいくルイーズは、無心にひたすら羽ペンを動かしていく。

「騎士団の練習場で、女性に腕を組まれても、拒まない姿は…嫌だったわ。でも、女性に慣れるための練習だったと、キースさんが言っていたわね。こんな気持ちになるのは……、気になるから?…好きだから…よね。

それから……今日は馬に乗ることができて嬉しかった。花畑も素敵だった。思い出せないのは残念だったけど……。思いを伝えてくれたことも、婚約の話も……、突然だったけど…すごく嬉しかった。

でも、リオンさんの専属侍女……。本気なのかしら?侍女の仕事は、きっと大変だけど、楽しいし、やりがいがあるわ……それに、学んだからには生かしたい…………でも、リオンさんの専属侍女は…違うと思う……それに今は、やるべきことが他にもあるわ」


本人は無意識だが、書いた内容を小声で呟いている。今日はそれほどまでに、心に負荷がかかっていたのだろうか、それとも蓄積していた感情が溢れ出たのだろうか。

今のルイーズにとって、自身の感情に向き合い、気持ちの整理をする時間が必要なほど、リオンの存在と侍女の仕事はどちらも大切なものなのだろう。分けて考える必要もないと思うが、どちらとも真剣に向き合うところはルイーズらしいのではないだろうか。

夢中で自分と対話をしているルイーズは、心配そうな表情のリアムが、時折ドアから顔を出して様子を伺っていることにも気づかないようだ。

それからしばらくの間、ルイーズは思考の整理に励んでいた。