「では、そういうことで……。当日は何が起こるかわからない。三人は絶対に部屋からは出ないように」

リオンに念押しされ、頷く三人。

話し合いも終わり、キースやクロードが部屋から退出しようとする中、リオンはその場を動けずにいるようだ。

「ルイーズ、少し良いだろうか?」
「はい、何でしょうか」

ルイーズの淡々とした話し方に戸惑うリオン。

「すまなかった」
「何について…でしょうか……?」

「…………」

黙り込むリオンに戸惑うルイーズだが、何か伝えたい言葉があったようだ。

「リオンさん、先日は看病をしていただいて、ありがとうございました」

「いや、良いんだ。自分がしたくてしたのだから。それに、回復して良かった」

「感謝しています。それと……私は、リオンさんから呼び捨てで呼ばれる関係ではないと思います。できれば、エマさんやエリーに対する呼び方と、同じにしていただきたいです」

「いや……だったのだろうか。すまない、気をつける」

「はい、お願いします」

それからしばらくしても話し出さないリオンに、ルイーズはお辞儀をしてテーブルの上を片付け始めた。

その一部始終を近くで見ていたエマとキースは……

「リオンさんって、あそこまで不器用だったかしら……」

「いや、舞踏会やお茶会では笑わないが、それなりに接していると思う。言い寄られれば、上手く躱しているしな。まさか、本命を前にすると、あそこまで酷くなるなんて思わなかった。なあ、ルイーズ嬢は怒っているのか?」

「うーーーん。わからないわ。ねえ、エリー。ルーちゃんは怒ってる??」

「怒っていないわ。でも、あんな感じのルイーズは初めて見るかもしれない……」


三人と一緒にいたリアムは、皆の会話を聞きながらリオンを見ていたが、すっと立ち上がるとリオンの側に歩み寄った。

「姉上は……料理も好きですが、花が大好きです」

「リアム……ありがとう」

弱々しく笑うリオンと、背中をポンポンと叩くリアム。
ルイーズのお世話係をした二人には、やはり絆が結ばれていたようだ。