「侍女としては、奥様と侍女長のご意向に従います。ですが、私個人としては、しばらくの間はこのままで様子を見ても良いのではないかと思っています。最近では、ミシェル様もご自身の思いを伝えることがお上手になってきましたしね」

「そうなのよね。今日も部屋に行けなかった私に『おへやでまってた』て言ってきたのよ。前はぐずるような仕草をしていたのに」

「えぇえぇ、分かります。その仕草も可愛すぎて、なんでもお願いを聞いて差し上げたくなってしまうのです。危険です、気を付けないとミシェルお嬢様の教育によろしくありません」

「フフッ……そうね。うん、気をつけないとね」

「さあ、お嬢様。明日はせっかく学院もお休みなのです。明日のお休みを楽しむためにも、宿題がお済みになったら、就寝の準備をなさいましょう。ところで、明日は何かご予定がございますか」

「何もないわ。一日家で過ごそうと思うの」

「かしこまりました。明日もお庭に出るようでしたら、朝早いお時間にお声をかけさせていただきますね」

「うん、そうしてもらえると助かるわ」

「かしこまりました。それではお嬢様、夜更かしなどせずに、早くお休みになられてくださいね」

「わかったわ。おやすみなさい」

「おやすみなさいませ、お嬢様」


ローラにミシェルのお世話も兼任してもらうようになってから、今まではローラにしてもらっていたお風呂から就寝前のやるべきことは、自分ですることにした。ローラの負担があまりにも大きいからだ。

「お母様もローラも、婚約が白紙になることをトーマスから聞いているはずなのに、話題に出さないでいてくれたわね。もし聞かれても、内容によっては返答に困るから、何も聞かずにいてくれてよかったわ」