「そうだ。リオンには、従妹にハニートラップを仕掛けるために、練習をしてもらっていたんだ。聞くところによると、その従妹はリオンに惚れていて、かなり押しが強い人物だそうだ。」

「練習…そういうことですか……それで、リオンさんもされるがままに、抵抗しなかったんですね」

「エマ…あまり、リオンを虐めないでくれるか。今日だって、無理やり連れていったんだ。いい加減、女性の扱いに慣れてもらわないと困るんだ」

「虐めてなんていないわ。ただ……良い感じだったのに、振り出しに戻ったから残念に思っただけよ。今が、二人にとって大事な時なのに……」

リオンは眉間に皺を寄せて俯き加減だ。

「君も幼いが、後継者教育を受けてるだろうから分かるよな。色恋も大事だが、後継者になる者にとって、大事な時機がある。今はクレメント家にとっても、国にとってもその時なんだ」

キースは、ルイーズの身内に助けを求めたようだ。

「僕は、幼いという年齢ではありません。それに、教育は受けていますから、跡継ぎにとって大事なことはもちろん学んでいます。

僕は……10歳なので、色恋には疎いかもしれません。でも、僕にとって家族はとても大切です。姉や妹を傷つける人は、絶対に許しません。父も同じ考えだと思います」

「リアムの言う通りだ………俺は、色仕掛けはやらない」

「お前、それが一番確実な方法なんだぞ。相手が結婚を狙っているならなおさらだ。お前が誘惑すれば、簡単に口を割るかもしれない」

「公爵令息様は、リオンさんが色仕掛けをできると思っているんですか?僕は無理だと思います。それから、リオンさんもできないのなら『やらない』ではなく、違う案を出してください」