エマの言葉を聞いて、冷静になったルイーズは、軋むような胸の痛みを落ちつかせることができたようだ。自身の気持ちや、今すべきことは何か、様々なことを心に問いかけながらも、目の前の作業に集中するルイーズ。

ドアの隙間から入ってくる声も、ルイーズには聞こえていないようだ。

一方で、ドアの前で繰り広げられていた言い合いも決着がついたようだ。エリーがキッチンに入ってくると、何事もなかったかのように、ルイーズの側に歩み寄った。

「任せちゃってごめんなさい。私も手伝うわ」

「……エリー、ありがとう」

「…………うん」

ルイーズにお礼を言われると、少しだけ涙ぐむエリー。そんなエリーを見つめながら、ルイーズは何かを思い出しているようだ。

「そうだわ……エリーは…いつも、言い返してくれていたわ。優しくて、熱いところがあって……なんで、忘れていたのかしら……」

顔を上げ、目を見開いてルイーズの表情を伺うエリーは、その直後、顔をくしゃくしゃにさせて泣き出した。涙腺が決壊したようだ。その様子を見たルイーズもまた、顔をくしゃくしゃにして、笑うように泣いた。

しきりに泣いたエリーの涙も止んだ頃、エリーが何かを思い出したような表情で、ルイーズの顔を見た。

「忘れてたわ。さっき、リオンさんとキースさん、あとクロードさんが部屋に来たの。手が空いたら、隣の部屋に来るようにって言っていたわ」

「そう。それなら、折角だからマドレーヌを持っていきましょうか」

「…………そうね、さっき睨んじゃったし」

「フフッ……じゃあ、用意しましょう」

二人は急いで、お茶の用意を始めたようだ。