「エマさん、私も気になったことがあるんです。他の侍女より、近くにいることが多かったメアリーさんは、本当にメイドなのでしょうか。話す言葉や所作も、お手本にしたいと思えるくらい綺麗でした」

「…………盲点だったわ……ねえ、私たちの母親って、昔から仲が良いのは知ってるでしょう? 実は、二人とも王妃様と親交があるのよ。女学院時代の先輩・後輩だったらしいわ。
だから、話しが筒抜けなのよね。お母様もレアのことを気にかけていたし……一瞬、隣国のスパイかと思ったけど……もしかして、王妃様がクレメント家に潜ませたのかもしれないわね」

「エマちゃん、後半の部分は憶測よね。誰が聞いているかわからないから、口にはしない方が良いわ」

「もう、エリーは心配性ね。でもまあ、確かにそうね。気をつけるわ。」

エリーに諭され、反省した様子のエマだが、尚も言葉を続けた。

「そうだわ。四人でリリーちゃんの部屋に行ってみない?ルーちゃんもその後が気になるだろうし、紹介もまだよね。それに、メアリーさんもいると思うわ」

「それはそうだけど、ルイーズと妹さんは、まだ人に会わずにゆっくりとした方が良いんじゃないかしら」

「ルーちゃんとリアム君はどう?」

「確かに気になりますし、ご迷惑でなければご一緒させてください」

「僕は姉上が良ければ」

こうして四人は、リリーの部屋へ行くことになったようだ。部屋を出て、廊下をしばらく歩くと、何やら賑やかな声が聞こえてきた。四人は廊下の窓から外を見ると、その声は、騎士団の練習場から聞こえてくるようだ。

「すごい人ね。練習風景はたまに見かけたけど、こんなに大勢いたかしら」

エマは、騎士の人数に驚いているようだ。エマの後ろから、その光景を見ていたエリーが、今まで見たこともない怖い顔つきになっている。隣で見ていたリアムが、そんなエリーに目を見張った。

「エリーさん、どうしたんですか? 何かありましたか?」