どうやらクロードがやってきたようだ。

「ああ、入ってくれ」
「ブラン子爵令嬢、目覚めたばかりのところ申し訳ない」
「私のことは気にしないでください。それに、呼び方も名前で良いですよ」
「ありがとう。それではルイーズ嬢と呼ばせていただく。ルイーズ嬢、早速だが、ぬいぐるみについて一つ確認させてほしいんだが、良いだろうか」
「はい」
「ルイーズ嬢が倒れた後、ぬいぐるみに布を被せて倉庫に保管してあるんだが、ぬいぐるみから宝石だけを外して、木箱にしまいたいんだ。宝石がどこに付いていたのか教えてもらえるだろうか」

倒れた時のことを思い出しているのだろう。考え込んだ様子のルイーズ。

「無理するな。今すぐ思い出さなくても良いんだ」

リオンは、心配そうにルイーズを見ている。

「……いえ、大丈夫です。……あの時、どうしてもぬいぐるみが気になって、宝石が付いているか確認していたのですが、赤い宝石は見当たりませんでした。でも、ぬいぐるみの首元かしら……触ったときに、指先から何だか嫌なものがじわじわと這い上がってくるような感覚がありました。断定はできませんが、宝石はぬいぐるみの首に巻かれていたリボンに付いていたのかもしれません」

「リボンか……分かった。ルイーズ嬢、感謝する。それから、リオン。王都から公爵令息が来ている。すぐに執務室にきてくれ」

「キースが……? 分かった。すぐに向かう」

リオンはルイーズとリアムに向き直ると、申し訳なさそうな顔で切り出した。

「すまない、少し出てくる。今日は部屋から出ずにゆっくりしていてほしい。リアム、後は頼んだぞ」

リアムに頼んだ後も、離れがたいとばかりにその場から動かないリオン。見るに見かねたリアムが、リオンを急かした。

「大丈夫です、任せてください。リオンさんは、早く執務室に行ってください。公爵令息様が待っていますよ」

「……行ってくる」

肩を落としながら部屋を退出するリオンを、リアムとルイーズが見送った。