リオンとリアムがルイーズのお世話をするようになってから三日目の朝。
ルイーズがようやく目を覚ました。少しの間、重たそうな瞼を何度もゆっくりと上下に動かし、意識がはっきりするのを待っているようだ。首を軽く左に向けると、リアムがすやすやと寝息を立てて眠っている。今度は首をゆっくり右側に向けると、流れるような美しい銀色の髪が視界に入ってきた。リオンは、椅子に腰掛け、ベッドに突っ伏したまま寝てしまったようだ。

ルイーズは、戸惑った表情を見せるも、リオンの寝姿に何故か懐かしさを覚えたようだ。無意識なのだろうが、リオンに握られている手を軽く握り返している。瞼に力を入れてぎゅっと閉じるも、ルイーズの目には涙が滲んでいるようだ。

ルイーズの手の動きに気づいた様子のリオンは、ベッドから顔を上げると、涙を堪えたルイーズの顔を見て狼狽えた。

エマに言われた言葉が頭を過ぎったのか、リオンはゆっくりと手を離した。

「すまない…………気分はどうだ?……今、水を持ってくる」

動揺するリオンを見つめるルイーズ。

リオンは卓上に用意された水をコップに注ぎ入れ、それをルイーズの口元に運んだ。

「ありがとう」

ルイーズは、リオンにお礼を伝えるも、その後の言葉が続かないようだ。

「ああ……」

その時、隣で眠っていたリアムが、目を覚ましたルイーズに気がついたようだ。

「姉上? 起きたの??」

リアムはまだ眠たそうな顔つきだが、目覚めたルイーズの顔をじっと見つめている。

「なんで泣いているんですか……? どこか痛いですか? リオンさん……、姉に何をしたんですか?」
ルイーズは、リオンを疑うリアムを嗜めた。

「リアム…違うの。……今、お水を飲ませてもらっただけよ」

「……そう、ですか……リオンさん疑ってごめんなさい」

「いや、良いんだ。俺は爺さんを連れてくる。リアム、後は頼んだ」

リオンからその後を頼まれたリアムは、頷きながらも急いでベッドから降りた。小走りでクローゼットに向かい身支度を終えると、ルイーズの側に戻ってきた。

「姉上、気分はどうですか」

「ありがとう。まだ……、身体は動かしづらいけど、気分はそこまで悪くないわ」

「そうですか、良かったです。お医者さんが来るまで横になって待っててくださいね」

「リアム、ありがとう」