しばらくの間、リオンは医者と言葉を交わすと、別れ際にリリーの健診も頼んだようだ。明日から、定期的に診察に来てもらう約束を取り付けたことで、リオンの顔から強張りが消えた。
その後、ブライスが医者を連れてリリーの部屋へ向かうと、リオンは三人から質問攻めにあった。

「リオンさん、先ほどのお医者様はお知り合いですか?」

「ああ、そうだ。クレメント家の元専属医で、皆とも顔見知りだ。息子に専属医を引き継いだ後は、市井で診療所を開放している。うちの騎士団員たちも未だに世話になっている」

「そうですか。昔からの知り合いなんですね……だから、ルーちゃんがこの土地で巻き込まれた事件のこともご存じなんですね」

エマからの問いに無言で頷くリオン。

「……自分と出かけている時に…市井で何者かに襲われたんだ」

その時、ブライスに連れられたリアムとエリーがドアの前に立っていた。

「リアムとエリー嬢が、ルイーズ嬢を心配しながら廊下で待っていたぞ。何故、誰も気づかないんだ。可哀そうだろう」

「すまなかった。部屋に入ってくれ」

リオンに呼ばれ、部屋へ足を踏み入れた二人だが、先ほどまでの話が聞こえていたのだろうか、少し気まずそうだ。

「お話中にすみません」

「大丈夫だ。二人とも心配してただろうに、配慮が足りずに申し訳なかった。それから、ルイーズの容態だが、しばらくは安静にしておく必要がある。だから……、自分がここで世話をしたいと思う」

「えっ?」「ルイーズ⁇」

リオンの敬称なしの呼び方を初めて聞く二人は驚いているようだ。