「………隣国」

隣国と聞いて、一瞬だが顔を歪めるリオン。そんな兄の変化を見逃さないレア。

「兄上、何かあるのか?」
「いや、今は関係のない話だ」
「兄上、隠し事はやめてくれ」
「…………」

リオンは、苦い顔をしながらも、レアに問い詰められ沈黙を破った。

「……叔母上から、キャサリンとの縁談を持ちかけられているんだ」
「なんだって⁉」

レアの声が部屋中に響き渡ると、皆の視線が二人に集中した。

「皆、すまない……レア、その話は後だ」
「…………」

黙り込み、テーブルを叩くレアを隣の席で宥めるエマは、普段とは違う荒々しい姿に戸惑っているようだ。

「レア、今は落ち着きましょう。先ずは、リリーちゃんのことを解決しないと」
「……ああ、そうだな……」

レアを心配そうに見つめていたルイーズは、レアが落ち着くと話し始めた。

「手紙には、術の依頼をした者の詳細には触れられてはいませんでした。その代わり、見かけたら気をつけるようにとの一文と共に、宝石についての詳しい記述がありました。術を施した者が残した当時の記録では、二つから三つほどの宝飾品が作れる大きさの原石で、研磨する前の大まかに整えられた状態だったそうです。研磨後は、きっと夕焼けを思い起こさせるような赤色をしているのではないか、と書かれていたそうです。それから……、安全に留意するように、宝石を見つけた場合は、その場で浄化をかけずにこの木箱にしまうようにと、リアムが父から預かっていました」