そんな会話のやり取りを近くで見ていたレアも安堵したようだ。

「ありがとう。それと、〈リリーの体内に沈む澱〉について教えてほしい。」

「私の考えですが、澱は妹さんの悲しみや否定的な感情が、宝石に反応してできたものかと思います」

「悲しみや否定的な感情……」

リオンとレアは、動揺しているようだ。その時、レアの隣にいるエマが疑問を投げかけた。

「ルーちゃん、良いかしら? 私は、50年前の宝石は〈曰く付き〉だと思っていたの。遠方の国では、年代物の宝石には『持ち主の思念がこもっている』と言われているわ。でも思念だけで、あんなにも大問題が起きるものなのか疑問だったの。ルーちゃんの浄化の力はその思念に反応したのかしら?」

「ある意味、思念ともいえますが……これは呪術だと思います。
でも、私は妹さんに触れた時点で、まだそこまでのことは判りませんでした。
手紙を読んで、あの澱は呪術の影響だと気づいたのです」

「そうなのね。御祖父様と御父様はご存じだったのね」

「祖父はあの問題が起きてから、ずっと宝石について調べていたそうです。その宝石を調べる流れで、この地を訪れた際に私が記憶をなくすという事件が起きました。そこで、祖父はそのことを調べるために、曾祖母の出身国である東の国へ行きました。その時に、呪術を使って宝石に呪いをかけた者がいたことを知ったそうです。

その術を依頼したのは、隣国の者で間違いないだろうと手紙には書いてありました」