父からの手紙を読み終えたルイーズは、険しい顔で俯いたまま、折り畳んだ便箋を封筒の中にしまった。それからしばらくしても、身動きできずにいるようだ。リアムは、そんな姉を黙って静かに見守っていた。

しばらくすると、ようやく気力が出てきたのか、ルイーズは静かに顔を上げた。正面のソファーに座るリアムと視線を合わせると、声にならないルイーズを慮って、リアムが先に声を発した。

「父上は、姉上には伝えることを迷っていました。しかし、滞在先が辺境のクレメント家ということで、何かあったときのためにと手紙を僕に渡してきました。もし、誰かの身に異変が起きたり、不可解な出来事が起きたら、この手紙を姉上に渡すようにと言われました」

「リアムは、この手紙の内容を知っているの?」

「はい。滞在の許可をもらった時に、教えてもらいました」

「そう……お父様は、どこまで理解しているのかしら……」

その呟きに頷きながら、リアムは話を進めた。

「妹さんの状態は、《誰かの身に異変が起きた》ことに当たると思ったので、姉上に手紙を渡したのですが……」

「ええ、リアムの考えは当たっていると思うわ。でも、その原因がどこにあるのか見当がつかないわね。それに、半月前に階段から転落したという妹さんの乳母は大丈夫かしら」

「……父上は、姉上が無理をするのではないかと心配していました。僕もそう思います。何かあったら手伝いますから、絶対一人で行動しないでくださいね」

「わかったわ。リアム、ありがとう」

その後、二人はこれからのことを話し合っているようだ。


「手紙の内容を、二人だけで留めておくのは難しいわよね」
「そうですね。やはり、四人には知らせておいた方が良いと思います。妹さんや、宝石のことも関係しているので」

「そうね」

ルイーズとリアムは話し合いが終わると、その足でシャロン姉妹とクレメント兄妹の元を訪ねた。