手をつなぎながら部屋に入ってきたリアムとミシェル。
 お目当ての姉を確認すると、二人は嬉しそうに顔をほころばせながらルイーズに駆け寄ってきた。

「姉上、お帰りなさい」

「ただいま、リアム。ミシェルの面倒をみてくれてありがとう」

「いえ、ミシェルはいい子にしていたので大丈夫です」

 ルイーズはリアムに微笑みながら頷いた。リアムからミシェルに顔を向け、ミシェルの目の高さに合わせるように屈んでから話しかけた。

「ミシェルはおにいさまの言うことをきちんと聞けたかな」

「うんっ!にいたまのゆうことちゃんときいたよ。ねえたまのこと、おへやでまってた」

「そう、偉かったわね。今日はお部屋に行けなくてごめんね、ミシェル」

「うん、いいよ」

 かわいい妹から許しをもらい、ルイーズはミシェルの頭を優しく撫でた。

 
 三人は、ルイーズの部屋を出て、母親の部屋に向かっていた。夕食前のこの時間は、母親のところへ行って一日の出来事を話す。今日はいつもより遅くなってしまったため、話せる時間はいつもより短くなってしまった。

 母親は三年前の出産の際に、出血が多かったらしく、二年前まではベッドの住人だったのだ。最近では、お茶会やパーティーに参加して、貴族夫人の義務を果たしている。それらに参加した翌日には、またベッドの住人となる母の姿を見ると、悲しくなるルイーズ。
回復の兆しは見えてきたが、まだまだ症状は不安定だ。できることなら、全快するまでゆっくりしてほしいが、貴族夫人としては、そうも言ってはいられないようだ。母親は弟がブラン子爵を継承するまでは、社交活動を続けるのだろう。

 母親の部屋につくと、ノックをしてから声を掛ける。

「お母様、ルイーズです」
「リアムです」
「ミシェルでしゅ!」

「三人とも入って」

部屋の中から聞こえる優しい声。

「失礼します」