見たところ、リオンとリリーは同じ年ごろのようだ。そんなリリーが、一人で寂しい思いをしていたのかと思うと、ルイーズはやるせない気持ちになったようだ。

「リオンさん、滞在期間中は私に妹さんのお世話をさせていただけませんか」
「……しかし、君に侍女の仕事をさせるわけには……」
「私は、侍女になるためにまだ勉強中ですが、お役にたてることもあると思うんです」

返事に迷うリオンを尻目に、ルイーズはリリーの手を自分の手で包み込んだ。自分よりも少し小さな手は、カサついていてひんやりとしていた。リオンやレアとは違う、薄紫の髪色に、透き通るような白い肌。今は血色が悪いが、早くお世話をして元気な姿にしてあげたいとでも思っているのだろう。リリーもルイーズに手を触れられていると、少しだが穏やかな呼吸になっている。心なしか、先ほどより瞬きの回数も増えているようだ。
しばらくしてから、リアムがレアとメイドのメアリーを連れて部屋に戻ってきた。
レアを呼びに行く途中で、メアリーにお水や洗面器の用意をお願いしたようだ。ルイーズはそれらを受け取ると、リオンとリアムに少しの間だけ廊下で待つように頼んだようだ。二人が廊下に出たことを確認すると、ルイーズはリリーのすぐ横に膝をついた。

「少し体を拭きますから、不快に思うところがあったら、私の方を見てくださいね」

瞬きをしながら返事を返すリリー。ルイーズは、その様子を見つめると、身体を優しく拭きはじめた。そして、表情が和らいでくると、ガーゼに含ませた水をリリーに飲ませた。