部屋を出たルイーズは、調理場の位置を考えているようだ。侍女科の授業で習った内容を思い出しているのだろう。

(調理場は……普通は生活する空間から離れた場所だけど、こんなに大きなお城だと、地下や別棟にあるのかしら)

廊下を歩き、使用人を探し歩くルイーズ。他家の屋敷内を勝手に動き回るのは失礼だが、使用人に中々会うことができないのだから、仕方がないだろう。

(これだけ広いと調理場も貯蔵室も大きそうだわ)

歩いている廊下の先を見ると、別棟に続く廊下があるようだ。

(あそこまで行けば、誰かいるかもしれないわね)

廊下の曲がり角に近づいたところで、メイドと思われる女性に会うことができた。ルイーズは、少し驚いた表情の女性に声を掛けた。

「少しよろしいですか。わたくし、本日からこちらに滞在している者ですが、食事を取っていない者に食事を用意したいのです。料理場が稼働していないようなら、貯蔵室から食材をいただけますか?」

「かしこまりました。何をご入用でしょうか?よろしかったらお部屋までお持ちいたします」
「ありがとうございます。よろしければ、わたくしも連れて行っていただけますか?」

「調理場には入ることができませんが、貯蔵室にはまだ専用の係がいると思いますので、ご案内はできますが……」

「不躾なお願いをしてすみません。よろしくお願いします」

メイドに案内され、貯蔵室にきたルイーズは、自分の想像を超えた部屋の大きさと食料品の豊富さに驚いているようだ。きっと、料理好きのルイーズにとっては楽園のような場所なのだろう。感動した様子で辺りを見回すルイーズに、男性使用人が声を掛けてきた。