一冊のノートを用意して、表紙には「L」の文字を書く。
 日記ではなく、自分と向き合うためのノート、Lノートだ。

 エリーの決意に触発されて、ルイーズもこれからのことを真剣に考えてみることにしたようだ。

 まずは自分について書いてみるようだ。

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ルイーズ・ブラン ブラン子爵家 長女 16歳

カルディニア王国 出身
カルディニア王国女学院1年生 淑女科

髪色:ダークブラウン 髪の長さ:腰までのロングヘアー
瞳の色:グリーンアイ

(家族)
父 ルーベルト・ブラン 42歳
母 エイミー・ブラン 38歳
弟 リアム・ブラン 8歳
妹 ミシェル・ブラン 3歳

大切なもの:家族・家族同然の使用人のみんな・友人
好きなもの:植物(特にお花)・園芸・お菓子
嫌いなもの:特になし
得意なこと:料理(特にお菓子作り)

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 書き出した内容を読み返すルイーズ。

「これ以上は……、なにもないかな……」

⦅侍女科のカリキュラムは家庭的なこと全般を学ぶ授業が多い⦆⦅もしルイーズが一緒だったら心強いのに⦆

 ノートの端にエリーから言われた言葉を綴っているようだ。きっと、庭園のカフェでエリーから言われたことを思い出しているのだろう。エリーは何気なく言ったことかもしれないが、気持ちが落ちていたルイーズにとっては、嬉しい言葉だったようだ。

「私にできることって……、何だろう……」

 考えに煮詰まっていると、ルイーズの部屋をノックする音と共に、可愛い声が聞こえてきた。

「姉上」「ねえたまっ!」

 ルイーズはその声を聞くだけで、頬が緩み口角が上がる。
 愛する弟と妹の声だ。

「どうぞ!入って良いわよ」

 普段は、帰宅すると弟と妹の部屋に向かうのだが、今日は男爵とオスカーに対応していたために、二人にはまだ会えていなかったのだ。

 思考の沼に嵌まっていたルイーズは、考えることを一旦止めて、部屋に入ってくる二人に笑顔を見せた。