そんなタイミングで、友達からメッセージが届いた。

【ソレイユ大丈夫? なんか変な奴に粘着されてない? 口コミ評価に酷いこと書かれてるよ】

「え、何それ……」

教えてもらった飲食店サイトの口コミを辿る。
そこには、“まずい”だの“店員の接客態度が悪い”だの“古くて汚い”だの、あることないことがたくさん書かれていた。

【よくある話だけど、変なやつに狙われただけかも。気をつけてね】

もしこの口コミが原因でソレイユの売上が落ちているのだとしたら、何とかしなくてはいけない。誰に相談したらいいのだろう。

口コミのことも、雄一との関係も、全てがぎこちないまま、それでもソレイユを閉めるわけにはいかないため、傍目からは気づかれないように笑顔で仕事をした。

お客さんと触れ合っているときが一番心が安らぐ。常連さんが来てくれると、やっぱりソレイユは愛されているんだと実感できて嬉しくなった。口コミの低評価だって、きっと誰かのいたずらに違いない。

そう、私は間違っていない。

そう思うのに、ソレイユは古いと言われたその言葉が頭の中を離れない。今までなんとも思わなかった壁のシミやテーブルやチェアの昔ながらの形が、それでいいのかと問いかけてくるようだ。

「ソレイユって古めかしいでしょうか?」
「それがソレイユの持ち味なんじゃないかしら。私は好きだけど」

ぽろりと溢した私の言葉に、千景さんがキョトンと首を傾げた。

千景さんは祖父の代からソレイユでアルバイトをしてくれていて、成人したお子さんがいらっしゃる。そんな千景さんに「好きだ」と言われてほうっと胸をなで下ろしたのだけど――

「そうですかぁ? 私はソレイユは古いと思います。もっと新しいカフェの形態を取り入れたらいいのにって思ってます」

桃香ちゃんが屈託なく主張する。その言わんとするところが雄一と同じなんじゃないかと勘ぐって、心臓がドキリと揺れた。

「桃香ちゃんは若いもの。確かに若者には古く映るかもしれないわ。でも古いのもいいものなのよ。わかる人にはわかるってやつよ」

千景さんがくすくすと笑い、桃香ちゃんも「そうですかねぇ」と笑う。誰も敵意などない、それぞれの意見を言っただけなのに、私の胸はざわりざわりとさざ波が立った。