「穂高さんに聞いてもらっただけで少し心が軽くなった気がします」
「それはよかった。また何かあったらおっしゃってください。僕はいつだって莉子さんの味方ですよ。あなたの力になれたらいいなと思います」

ボストン型フレーム眼鏡の奥で優しく微笑む穂高さんはとても頼もしくて、慈悲深い。彼の声も、表情も、見ているだけで心が落ち着いてくる。なんて大きな人なのだろう。

「穂高さんに弁護される方は幸せでしょうね」

そう言ったら、少しだけキョトンとして、ひときわ柔らかく目を細めて微笑んだ。そんな姿は新鮮で、図らずも心臓がドキンと揺れる。

「莉子さんの笑顔に幸せをもらっているソレイユの常連客、たくさんいると思います。だから、笑っていてくださいね。僕もまた行きます」

今度はこちらがキョトンとなる。言葉を理解するにつれて胸がじわりと熱くなった。カフェの経営者としてこんなにも嬉しい言葉はない。

「ありがとうございます」
「こちらこそ」

お互いふふっと笑った。
穂高さんと話をするとどうしてこんなにも安心するのだろう。心がふわっと軽くなって、あたたかな気持ちに包まれた。そんな気持ちにしてくれた穂高さんには感謝しかない。

たくさんの感謝の気持ちを伝えて、事務所をあとにする。何も解決はしなかったけれど、誰かに話すことで落ち着く心もあるんだということに初めて気がついた。

足取りは軽い。心地よい風が吹き抜けて、目の前が少し明るくなった気がした。