私は怖くて涙目になって、リョウちゃんに尋ねた。
「どうしてリョウちゃん?」
黙ったままリョウちゃんは、私を指さした。
訳が分かんなくて、ただ愕然と立ち尽くした。
「お前には、待ってる人がいるんだよ。見て見ろよ」
指さされた方を振り返ると、お姉ちゃんやヨシユキさん、友達やさっき生まれたばかりの赤ちゃんが、そこに映像として映し出された。
「ごめんなユキ。本当はずっと一緒に居たかったんだけどな、無理みてーだ。幸せんなれよ?俺みたいな無責任、もう好きんなんなよ。赤ちゃん、ちゃんと育てろよ?」
「なにゆってんの?意味わかんないよリョウちゃん!やだ!行かないで!!」
手を思いっきり伸ばしたけど、案の定届かなくて、リョウちゃんはまた歩き出した。
「そうだユキ。後ろ見てみ?」
再び振り返ったリョウちゃんの言葉に、振り返った私は目線を地面に落とし、驚愕した。
「帰り道」
そう言ったリョウちゃんが指さしたのは、白く光る小石。
「それ辿れば帰れんぞ」
「待って!リョウちゃん!」
そう叫んだつもりなのに、私の声はまた、息となってこぼれ落ちた。
涙で滲む視界に移った歪んだリョウちゃんは、笑った。
『 あ い し て る 』
何も聞こえなかったけど、口の形がそう言った。
振り返った私は、白く光る小石を拾いながら、出口を目指した。