「先生…今、なんて………?」
「ですから、妹さんは『常位胎盤早期剥離』と言って、分娩前に母体である妹さんと、赤ちゃんを繋いでいる『胎盤』と言うものが剥がれてしまい、大変危険な状態にいます。赤ちゃんは帝王切開で取り出します。我々も全力を尽くします」
それだけ言うと、頭を深々と下げた医者は治療室へと入って行った。
「ヨシくん…。どうしよう!ユキが……ユキが………!」
狂ったように病院の廊下で叫び続けるカナ。
「大丈夫。ユキちゃんはそんなに弱くないよ」
そんなカナの肩を抱き、励ましているヨシユキ。
バタバタッ
暴れるような乱暴な足音と共に、リョウスケが現れた。
「ッユキは…?!」
ヨシユキが説明しようと席を立った。
リョウスケは固く結んだ拳を、血が滲むほど強く握ると、歯を食いしばってその場に土下座した。
「すみませんでしたっ!自分が…自分がしっかりとしていたら、こんな事には……」
何も言わずにヨシユキは、リョウスケの肩を持ち立たせた。
リョウスケは自分に対する怒りを胸に秘め、来た方へ向かって走り出した。