「いらっしゃい」
お姉ちゃんは玄関を開けて、笑顔を向けた。
リョウちゃんはちゃんとしたスーツにネクタイをしめた格好で、つま先から頭のてっぺんまでピンと伸ばし、気をつけをしていた。
「コノタビハ、マコトニモウシワケアリマセンデシタ」
緊張でカチコチに固まったリョウちゃんを、お姉ちゃんは笑顔で受け答えする。
その笑顔は訳ありで、なんだか怖かった。
「とりあえず入ったら?」
ドアを開けた状態のお姉ちゃんが、手招きをする。
「リョウちゃん、とりあえず入ろう…?」
私はリョウちゃんの背中を軽く押して、中へ入るよう促した。
玄関を上がるとお姉ちゃんの旦那さんである、ヨシユキさんの笑い声と、テレビから流れる笑い声が混じり合って聞こえてきた。