イエルクは私が転びそうだったのに、手も出さなかったオスカーを見たけど、私は首を横に振った。

 実は攻略対象者はそれぞれ深刻な問題を抱えており、オスカーは女の子に触れられない。

 それは、オスカーは幼い頃からすぐ上の姉から、異常な執着を向けられていて、彼女の恐怖から女性に触れられなくなってしまったのだ。

 もちろん、オスカールートでの恋の邪魔をする悪役令嬢役は、姉カミラ。

 解除方法というか……好感度マックスの状況で、ヒロインがキスをすれば触れられないこと自体は治ったと思う。

「ロゼッタちゃん。ごめんね……」

「大丈夫です。オスカー先輩。気にしないでくださいね」

 オスカーは姉に怯えてしまうような弱い自分が嫌で、身体を鍛えるようになり、魔法使いでは考えられないくらいに強くなり、魔剣士としての訓練も特別に受けている。

 だから、立場的にはとても可哀想で、彼には私が居なきゃって思ってしまうんだよね。

 あんなにも強いオスカーが見せる弱みって、いかにもなギャップっていうか……こう、私が守らなきゃって、そそるものがあるというか。

「ロゼッタちゃん。どうかしたの?」