送ったからって私が自分が好きだと思うなんて思っていないし、それほど彼にとって対象外っていうことなのよ。

 多分、本当に困っていると思って、助けてくれようとしたのよね……優しいけど、残酷な事実。

 三頭の犬《ケルベロス》は、今日は機嫌が悪かったらしく、「なんで、こんなに寮に帰って来る時間が遅いんだ」と、説教され掛けたけど、私は聞こえない振りをして微笑みながら、するりと扉をすり抜けた。

 そして、食事と入浴を済ませ、今日図書館で調べてきた『双月草』についての記述を書き写して来たノートを開いた。

「……魔の森の高原のこの位置に、双月草らしき光る薬草を見掛ける……フローラ以外には、気がつかれなくて当然だわ。だって、薬草辞典のような薬草について書かれた書物ではなく、アクィラ魔法学園の創設者の日記にこんな大事な情報が書かれているなんて……」

 歴史的偉人という訳でもないし、なんで紛れ込んでいたんだろう? と、不思議になるような学園創設者の日記は、これまでにあまり読まれなかったようだ。