「私への生徒会入りの特別条件は、そっ……双月草を手に入れることですか?」

「そうだ……もし、それが出来れば、私は君を生徒会へ推薦してやろう。ロゼット・ディリンジャー。頑張れよ。朗報を待っている」

 にやにやとした悪い笑みを浮かべて、エッセル先生は呆然とした私の頭をポンと教科書で叩いてから、職員室へ帰っていった。

 ……嘘ー!

 エッセル先生だって絶対無理だと確信している、不可能案件だよね!?

 もしかしたら、エルネストを狙って、私が生徒会に入りたがっていると誤解されているのかもしれない。

 ……生徒会長エルネストは私が生徒会へ入ることを嫌がるだろうからやめておけと、特別条件を出す段階で、こうして牽制された?

 ゲーム内のアイテムでも双月草は登場し、ヒロインフローラが怪我をした攻略対象者のために双月草を手に入れるというイベントは確かに存在したけど、それは来年のことで……って、待って。

 そうだった! 今年、青と赤の月が同時に満月になるのは、もうすぐのはず。

 確か……うろ覚えの情報だけど、とても希少価値の高い双月草を手に入れる機会は、年に一度の紫の満月しかなかったはず。

 まだあまり知られていない深い魔の森にある高原に双月草が咲くんだけど、どういった理由でかふたつの月が満月の時しか、薬効のある双月草の花を採取することは出来ない。