今日、挨拶だけしたら瞬殺されたけどね。絶妙にイラつく質問をされて、私はにっこり微笑んだ。

 イラついても、何も良いことはない。平常心よ平常心。

「ええ。私もそろそろ大人になったのよ。報われない恋は、諦めるべきではないかと考えたの」

「もしかして……誰か違う方が、居るということですか?」

 あ。私がエルネストを諦めた様子だから、ステファニーは何が原因なのかと、気になったというところかしら?

 関係ない私なんて放って置けば良いのに、魔法学園の学生って、ずいぶんと暇なのね。

「そうなの! 入学したばかりの年下の男の子なんだけど、すごく可愛いのよ。エルネスト様は王族で第二王子だし、私も高望みをし過ぎてしまっていたわ。身近な男の子の方が、話しやすくて良いわね」

 イエルクのことを好きかと言われると、それは微妙なんだけど私は、これから周囲から見てそういう行動を取っていると思われると思うし。

 ……それはそれで、彼女たちにも、誤解されても良いことにしよう。

「えっ……本当なのですか。あんなにもお好きな様子だったのに、ロゼッタ様はエルネスト様のことを、完全に諦められたのですか?」