「おはよう。君って……イエルク・アスティという名前なんでしょう? 良い名前ね。新入生よね」

 くるくると癖のある黒髪のイエルクは、まるで人形のような端正な顔に、血のような真紅の目を持っていた。

「……」

 三人目の攻略対象者イエルクは、話しかけた私を見て居ることを確実に認識をしたはずなのに、特に完納をすることなく、すたすたと先へと進んだ。

「私……二年生で、ロゼッタ・ディリンジャーよ。よろしくね」

「……」

 自己紹介しても無言でスタスタと歩きを進めるイエルクは、必死に彼についていく私の話を聞いてくれる気はないみたい。

「……ごめんね。急いでいるのに」