それに、竜に私のさっきの呟き声が聞こえた?

 彼らは高く上空を飛んでいて、ここに居る私とはかなりの距離が離れていたのに……魔力が強い竜ほどの使い魔だと、こんなことも簡単に出来てしまうんだわ。

 そんな経緯でやって来た彼をまじまじと見ると、さらりとした真っ直ぐな黒髪を、夜風になびかせた美青年だった。目は珍しい紫色で、それは興味津々できらきらと輝く好奇心に満ち溢れていた。

 単なる旅人と言うには、かなり良い身なりをしているように見える。けど、竜を使い魔に出来るほどに魔力が強い魔法使いならば、良い職にだって就いているだろうし、とてもお金持ちなのかもしれない。

 ……竜に乗って、世界を旅して、回っているのかな……きっと美味しい物も食べ放題だよね。すごく羨ましい。

 もう二度と会うこともない人なのなら、別にここで変な女だと思われても構わないかもしれない。魔法界って日本での距離感で言うと、信じられないほどに本当に広いし、偶然にここに来ただけだと言うのなら、変な妄想癖の女によくわからない相談受けたって思うだけかもしれない。

「あの……このままだと、魔法界が終わってしまうの」