しかも、ゆるく楽しむエンジョイ勢だったから、何がどうなるという時系列なんて本当にうろ覚えだし、そもそも乙女ゲーム自体始まってないのに、リッチ先生がどう動くかも予想出来ない。

 どんな生徒にだって温厚な対応で知られるリッチ先生は、実のところ狡猾で用心深い。

 だからこそ、ヒロインフローラと選ばれた攻略対象者の二人は、学園全体の魔力を吸い取る計画が実行される手前で、阻止するしかなかったはず。

 前世の記憶を持つ私はそれをどうにかしなければと、一人で悶々と考え続けている。

 そうなのよ……乙女ゲームが始まらない今、それを防げるのは、私一人だけでしょう?

 おぼろげな記憶を辿るとゲームの中のように、リッチ先生の企みを阻止するためには、まず、ヒロインフローラのような光魔法の使い手の協力は必須だった。

 フローラの助力を借りること自体は、簡単だと思う。あの子は素直で可愛くて、事情を知ったならきっと私に協力してくれるはず。

 あとは、黒い宝石の邪悪な魔力を払う彼女を護ってくれる存在、そう……攻略対象者くらいの強さを持つ守護者が必要だ。