前世ではもう三十代後半だった私には、この方が学生っぽくて、ロゼッタに似合ってて爽やかで可愛いと思う。

「そろそろ、食堂へ行こうかな……少し早い時間だけど……」

 描かれた表情がくるくる変わる顔付きの魔法仕掛けの壁掛け時計を見て、私はなんとなく呟いた。

 現在の時計は、ふんふんと鼻歌でも歌いそうな余裕の顔。

 これが遅刻寸前になってしまうと、鬼のような形相に変わるのだ。わかりやすい。

 いつもならロゼッタは、髪のセットであくせくしているけど、時間を掛けて巻かなければ、同じ時刻に起きたら時間は余る。

 という訳で、少し早いけど、私は朝食を取るために女子寮の食堂に出掛けることにした。

「……おはようございます!」

「おはよう」

 廊下を走り私の隣を慌ててすり抜けて行った女の子は、おそらく外部入学生だと思う。

 私のような中等部から持ち上がり組は、大体顔も見知ってしまっている。

 魔法界の義務教育は高等部だけなので、学生の数がいきなり倍になるから、在校生だって慣れるまでに数ヶ月掛かったものだ。

 時間が早過ぎて、すいている食堂には、ヒロインフローラも居た。