これまで兄の横暴に怯えるばかりで、自分を真っ直ぐに見られなかったはずのロゼッタが、急に余裕のある素振りをしたのが気に入らなかったらしい。

 わかっていたことだけど、サザールは器がとても小さい。きっと、何かを注いだらすぐに溢れるお猪口くらいの容量なのではないかしら。

 サザールの顔が、わかりやすく不愉快に歪んだ。

 何を言い出すの? ここで褒めた妹を責めたら、完全にそちらが悪者になってしまうけど。


 そこに口を挟んだのが、ディレンジャー家当主白髪で、長い白髭を蓄えている父ジョナサンだ。

「良い加減にしろ。サザール。あのように妹から新しい髪型褒められて、何をどう生意気だと言うのだ。お前の最近の行動は、流石に目に余るぞ」

 あら。珍しい……今までサザールがロゼッタを虐めていたことに無関心でこんな感じで口出しすることなんて、これまでになかったのに。

 もしかしたら、父親は怯えていた私が、横暴なサザールに何か言い返すのを待っていたのかもしれない。

 だから、今の返しが父には合格点だったというところかしら。