「いえいえ。エルネスト殿下……嘘に決まっています。王太子殿下はご冗談が、お上手で……もう」

 なんと言って誤魔化して良いものか、内心ひやひやしながら私は棒読みで答えていた。王太子殿下は楽しそうだけど、私は本当に居たたまれないよ!?

「そうですよね。ディリンジャー先輩は、王子と結婚なんて面倒だって、前に言ってましたもんね」

 イエルクはぼそりと呟いたけれど、それって、今言う必要ないよね!?

「いやいや、面倒などなかろう。ただ、僕と結婚するだけだ」

 私はその時に気がついた。王太子殿下、完全に楽しんでいる。私のあわてぶりだって、きっと。

「もー!! やめて下さい! 私にはもっと大事なことがあるんです!」

 リッチ先生の企みを防いで、魔法界を救うんです! それをなんとかしないと、王子様と婚約なんて考えられる訳もないよ!

「いやいや……ロゼッタ・ディリンジャー。男女二人で世界中旅行するなら、どのような関係性で行くつもりなんだ。僕たちが違うと否定しようが、誰もが誤解する事になるぞ」

 王太子殿下はムキになっている私を見て、楽しそうに笑っていた。

第一部 完