魔力が強くそれゆえに二色の魔法を使うことの出来る王太子殿下はあまり、公の場に姿を現すことはない。魔法学園にだって通う必要のないくらいに優秀過ぎたし、なんでも人嫌いのようなのだ。

 今回優勝賞品授与だって、多分弟のエルネストが出場するからきまぐれで了承してくれただけで……本来ならこういう場所には、本来ならば弟王子たちが出て来るはずだった。

「えっ……ええ。そうですね。はい。一度だけ……ええ。少しのお時間でしたが」

 あの時に会った私には正体を隠して居た、王太子殿下。出会った時の状況を話して良いものか私は悩み、真っ正面に居る彼をチラッと見上げた。

 やっぱり、おかしいくらい顔が良い。

 彼はエルネストの兄でしょう……?

 私の記憶によると乙女ゲームでは、出てこないはずのキャラだったはず……けれど、これだけ主役然としている人なら、隠しヒーローでもおかしくないと思う。

 だって、モブにしては、造形に気合いが入り過ぎだもの。おかしいくらいに格好良いのよ。

 王太子殿下の持つあまりの覇気に、存在自体かき消されてしまいそうなモブの三年生の先輩たちを私は横目でそっと確認した。