イエルクは珍しく、怒りの感情を露わにして怒っていた。

 とは言っても、サザールは謝ることはないだろうし、

「あの……エルネスト殿下。すみません。けど、大丈夫です。私はいつもの事なので、気にしてませんし」

「……いつものことだと? 妹に、暴言を吐くのが?」

 エルネストはサザールを見て、不快そうな表情をした。氷が取り巻いていた兄の身体は、ゆっくりと凍っていくのが見えた。

「おい! 止めろ! こんな……試合はもう終わっているのに!」

「ああ……すまない。俺は何もしていないのだが、魔法が暴走することもあるのかな。不思議なものだ」

 それは、エルネストがやっている事は間違いない。それは、この場に居る全員が知っていた。けれど、この事も知っていた。

 エルネストは真面目な性格で知られている王族だ。彼に何かをされたというサザールの意見など、無視されてしまって終わるだろう。

「すみません! 謝ります! 悪かったです! ……これで良いだろう?」

「誰に謝罪しているのかわかりません。名前がありませんよ。誠意を込めて謝罪してください」