彼らは驚いていた。申し訳ないけれど、私だって驚いていた。イエルクは驚いている彼らの隙をついて、杖を弾き飛ばし、手首を黒い蛇のようなもので捕らえると、審判に合図を送った。

 相手が戦闘不能だから、彼らを連れ出せということだ。二人が場外に運ばれるのを見ながら、私は指輪をじっと見つめた。

 なんだったの……? 今はもう青い光も見えない。何も感じない。

 けれど、この指輪は私に力を与えてくれた。

「……ディリンジャー先輩。この勝負は会長とお兄さんの、一騎打ちで決まります」

 イエルクに声を掛けられ、指輪に気を取られていた私は顔を上げた。見ていない間に、三年生の先輩たちがグーフォに勝利し、今戦っているのは、エルネストとサザールだった。

 二人とも実力は拮抗しているのか、純粋な魔力の強さで勝るエルネストが押しているものの、対するサザールは何個も風の刃を生み出し彼へと攻撃していた。

 二人の攻撃の応酬はリズムよくラリーのように続いていて、周囲を取り巻く私たちが何かしようものなら、エルネストに怪我をさせてしまいそうで加勢することも難しそうだった。