イエルクは私の隣で腕を軽くひと薙ぎしただけで、グーフォ側の放った攻撃魔法を受け止めていた。

「イエルク……ありがとう」

「いえ。ですが、ディリンジャー先輩。大丈夫ですか? 救護班が常時待機しているのは、怪我するのも前提の戦いだからですよ」

 イエルクは心配そうだった。救護班は完璧に治療してくれる上級白魔法使いが何人も居るので、どんなに怪我をしても即死しない限りは大丈夫だろう。

 私だって自分を狙った兄の魔法の刃のせいでオスカーが怪我をしなかったら、一人欠けたとしても、客席に座ったままだったかもしれない。

 けれど、私を庇ってくれたせいで怪我をしてしまったなら、私だって何もしないという訳にもいかない。

「……うん。大丈夫。二人で協力して、個体撃破をしていきましょう。イエルクは……平気?」

 今も攻撃は続いているのだけど、流石優秀な魔法使いとして知られるイエルクは全く顔色を変えない。

「僕は大丈夫です。ディリンジャー先輩は、赤魔法ですよね。あの結界を、破れますか?」