「わっ……私が出ます!」

 それを悟ったのだろう勘の良いフローラが自分が出ると手を挙げたので、私は慌ててしまった。

 彼女が使えるのは、今のところは白魔法だけで、治癒能力に特化しているのだ。これから上級魔法が使えるようになると、結界魔法や色々な補助魔法を使うことが出来るようになるけれど、まだ入学したばかりだった。

 つまり、今のフローラには自分の身を守る術を持たない。誰かが攻撃して来ても、それを防ぐことさえ出来ないのだ。

「いいえ。一人居ないよりは、マシです。私が出ます!」

 一人足りないと、一人で二人の相手をすることになる。今の生徒会のメンバーは皆優秀だし、影の薄い三年生の先輩たちだってそれはそうなんだけど、そこから勝敗が決まってしまうことだって容易に考えられた。

「ロゼッタ先輩? けど……」

 その時に、フローラは見るからに不安そうな表情を浮かべていた。

 サザールの態度は分かりやすかったし、私と同じ位置に居た彼女も口には出さないけど、彼の意図がわかったと思う。

 兄が妹の私を傷つけようとして、ここを攻撃魔法で狙ったという事実は。